ありがとう  2006 レンタルDVD ★★★★☆ 


今年の1.17はこの映画を見ることに決めていた。「ありがとう」という一編の日本映画である。阪神淡路大震災で被災し、60歳目前にしてプロゴルファーを目指した実在の人物・古市忠夫氏の活躍を描いた平山讓のノンフィクション小説「還暦ルーキー」を映画化した作品だ。監督は万田邦敏氏。主演の古市忠夫役には赤井英和、その妻の役には田中好子、他に薬師丸ひろ子、光石研、尾美としのりらが脇を固め、豊川悦司、佐野史郎、永瀬正敏、仲村トオルらが賛同出演している。題字を加藤登紀子が書き、主題歌「生きてりゃいいさ」を故・河島英五が歌っている。

d0086262_2514339.jpgまず、冒頭1995年1月17日午前5時46分に発生した大地震のシーンが衝撃的だ。ふだん見慣れた神戸の街が、あの日あの時間を境に、一瞬のうちに悲劇の街と化す。その時神戸郊外の自宅で大変な揺れに驚きつつも(震度5程度か)、震度6~7という揺れを実感していない私に、映像が容赦なくその凄まじさを教えてくれる。発生直後の家の崩れ方やその後の静寂、そして方々から上がる火の手。15億円という製作費の大半を費やしたという冒頭の地震発生直後のパニックシーンは、あらためて自然の脅威と文明社会の脆さを見せつけてくれる。

映画はそんな極限状態の中、自ら経営していたカメラ店や自宅を失いながらも勇気ある振る舞いで人命救助に打ち込む主人公の活躍をカメラが追う。その後、焼け出された家族を励ましつつも避難所や焼け跡で茫然と立ち尽くす主人公。それと同じ光景を、地震発生から数日の間に私は何度も目撃している。何もすることが出来ず、仕事の合間にただ遠巻きに被災者を見つめるだけの自分がもどかしかった。そんな傍観者にかまう暇などなく、主人公はその後、地元の復興のため町内会長や消防団の団長などを務め、ボランティア活動に奔走する。

d0086262_2521943.jpg私の職場の上司もエキストラで参加したという震災後の街づくりを話し合う住民集会のシーンが感動的だ。災害に強い街づくりを進めようと訴える主人公の説明に会場から野次や怒号が飛び交う。それを受け止め、利害関係の複雑に絡み合う住民の思考を一つの方向にリードすることが出来たのは、やはり主人公が“無私の人”だったからであろう。地域社会の復興に一定の道筋をつけた主人公が次に目指したのは、60歳を前にプロゴルファーになるという夢の実現だった。

もし震災体験がなかったら古市さんはプロゴルファーを目指していただろうか。答えはNOだと思う。やはり、震災体験という特異な価値感が主人公・古市さんのチャレンジ精神を呼び起したという他ない。プロテスト4日目の最後のパターを決めるとき古市さんはいう「はっきりと道筋が見えた」という。そして見事に念願達成。この映画で全編通して主人公は「ありがとう」のメッセージを見るものすべての心に届けてくれる。妻にありがとう、家族にありがとう、友にありがとう、自らを生かしてくれる命にありがとう。感謝して生きることの大切さを1.17の夜にあらためてこの映画は教えてくれた。



<今日の昼めし>
大阪で会議。駅前第三ビルB2の蕎麦屋で、にゅう麺と穴子丼のセットで遅い昼めし。1,000円。
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by inaminoTORAsan | 2008-01-17 23:56 | 映画のこと


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